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また、仕様・設計段階で顧客と十二分な打合せをすることに加え、仕様の段階においてクレーンや搭載機器等どのメーカーのものをどれくらいの仕入価格で用いるかを明記するなど、見積りを精密に行うことで、不要な価格折衝を回避している業者もあった。
作業効率を高めるため、半自動溶接機(溶接棒が自動的に補給され、作業を中断せず進められる)等を導入している業者もあり、作業中の手待ちや段取り替えといったロスを低減させる仕組みをとっていることが分かった。
また、作業船は漁船等と異なり、鋼材トン当たりの工数が少ないため、いかに部材を安く仕入れ、かつ部材ロスを少なくするかが勝負であると断言する業者もある。鋼材はロールで仕入れ、部材ロスが生じないように、板割りを原図段階で適切に行っているとのことであった。
このように、コストダウン努力を積極的に行っていることか分かったが、今後の作業船市場の見方については厳しい視点を擁しており、今後も作業船の船価の上昇回復は考えられないとする業者が多い。それは、安価な中国船等の流入を含む、新造発注側の相見積りの強化が予想されるためである。
仕入面
・協力工場分も合わせ、部材等の一括購入によりスケールメリットを発揮している。
仕入面に関しては、部材あるいは塗料等に関して、協力工場・提携工場の分と一括で仕入を行っており、スケールメリットの発揮により納入業者と有利に折衝を図っていることが分かった。
営業面
・北海道からの受注は商社(クレーンメーカー代理店)仲介が通例である。
・クレーンメーカーからの台船部建造発注も多い。
・特に北海道の海洋土木事業者を営業で回ることはしていない。口コミが中心である。
・以前建造した顧客からのリピート受注が多い。
・リースや中古船の転売も取り扱っている。
・今後、北海道に営業の駐在員を配置することを検討中である。
北海道の場合、クレーンメーカーの代理店か海洋土木事業者に営業を行っており、本州の造船所からの飛び込みの営業は現在では非常に少ないようである。台船の発注については、クレーン部と台船部の一括受注などクレーンメーカーが関与する場合が多いが、一括受注・分割受注にかかわらず、海洋土木事業者から造船所の指定などがなされることが多いようである。
海洋土木事業者の新造発注に関する造船所を決定する要因としては、価格、技術(使い勝手)、実績、納期等があげられている。発注性向としては、信頼性、信用や使い勝手の面で、当該社の建造実績のある造船所(クレーンも)や口コミで選定するというケースが多い。本州造船所は、このようにリピーターが多いこと、また営業範囲が全国と広いことから、道内で事前の営業は積極的に行っているようではなく、実際の引き合いがあってから営業に赴くという方式をとっていることが多い。
また、リースの取扱や中古船転売を行っている業者もあり、幅広く顧客ニーズに対応する仕組みを保持している姿が認められた。
なお、本州造船所の中には、今後北海道に営業のために駐在員をおくことを検討している社もあり、北海道造船業界としては予断を許さない状況であることに留意する必要がある。

 

 

 

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